序文
私たちが日常で目にする「お話」というものは、子供向けに内容を改ざんされた、いわゆる二次創作物であることが多い。特に「童話」は改ざん行為が顕著に見られる例で、童話本来の内容は特に残酷的であったりエロチックであったりと、およそ子供向けだない場合が多い。
「3匹のこぶた」で、こぶたたちは狼を退治した後にゆで揚がった狼をおいしくいただきました、と聞いたときには、こぶたに対する印象を改めなければいけないと強く思ったもである。
確かに残酷的であったりする本来の童話たちであるが、私にはこちらの人間味あふれる世界観の方が、物語としては相応しいように思えるのである。
現実の世界は実に複雑である。それこそ既に結末が決まっている書物の世界よりも様々なドキュメンタリーにあふれているのである。時に非道であったりもする(常にかもしれないが…)。そういった意味でも、残虐性や負の側面を前面に押し出した童話の世界は、現実の世界を端的に表した一つの指標であるといってもよいのかもしれない。
しかし、童話は時代の波の中で常にオブラートに内容を包みこむことを求められた、それは倫理観の変化であったり、時代の風潮であったりするのかもしれない。童話に見られた人間味の消失は、人間の本質に対する関心、ひいては自己の認識の消失を暗に示唆しているかもしれない。
だが、そうして童話本来の姿が隠された今だからこそ、人は改めて人間の本質を見極めなければいけないのではないだろうか。
今回の文献目録では、「童話」や「民話」といったもの心理的側面を探るためのテーマを定めているが、次回以降、さらに掘り下げてこういったことについての考察を行うための足がかりになれば万々歳である。
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